こんにちは。書店に勤めて10年目、僻地のとある書店員です。
みなさんは『ルックバック』という漫画ご存知でしょうか?
今年の7月にジャンプ+で掲載されるやいなや話題騒然となった読切漫画なのですが、9月に単行本が発売されて再度読んでみたので感想など踏まえて紹介しようかなと思います。
結論から書くとめちゃくちゃ面白い漫画でした!
初めて読んだときはかなり衝撃を受けて、あっという間に読んじゃいましたね。
間違いなく2021年の漫画史に残る作品だと思います。
ルックバックはこんな漫画
基本情報
- タイトル:ルックバック
- 作者:藤本タツキ
- 掲載:ジャンプ+(現在は途中まで無料公開)
- 単行本発売中(全1巻)
『チェンソーマン』『ファイアパンチ』で知られる藤本タツキ先生による、143ページという大ボリュームの読切漫画。
チェンソーマンはアニメ化も決定し、漫画の第2部開始も期待されるなどもともと注目度が上がっている中での読切でしたが、掲載するやいなやその内容に大絶賛の声が多数あがり大きな反響を呼びました。
特に同業の漫画家から絶賛の声が多く、彼らのツイッターで拡散された結果公開当日にビュー数が200万を超える作品になりました。また「作中で起こる事件での犯人の言動が差別的ではないか?」との指摘があり内容が修正されたこともより注目度を上げる結果になったといえるでしょう。
読切漫画では最もバズった作品と言って間違いないと思います。
9月に単行本が発売されましたが集英社もかなり強気に刷ったようで、読切漫画としては異例の発行部数になってますね。書店に行けば今ならまず間違いなく置いてあるはずです。
(正直発行部数多すぎて余ってる感はあります。読切漫画としてはかなり売れているのですが。)
あらすじ、登場人物など
あらすじ
学生新聞で4コマ漫画を連載している小学4年生の藤野。クラスメートからは絶賛を受けていたが、ある日、不登校の同級生・京本の4コマを載せたいと先生から告げられるが…!?
出典:ジャンプ+公式サイトより
学校新聞に漫画を載せている藤野と不登校の京本が、漫画家藤野キョウとして協力して漫画を作っていくお話。途中に起こる事件から衝撃の展開になります。
登場人物
- 藤野歩(ふじのあゆむ)
学校新聞に4コマ漫画を載せる少女。画力はそこそこだがストーリー作りの才があり、小学生ながら起承転結がしっかりある4コマを描く。多才で運動神経もよくで友人も多い。自信家の面があり、京本の絵を見て衝撃を受け「自分より絵が上手いヤツがいるなんて絶対ゆるせない!」と絵に没頭するが、京本の画力に追いつけないと悟り一度は筆を折る。
- 京本(きょうもと)
藤野の同級生で不登校の少女。画力が高く特に背景などに優れる。藤野から4コマの枠を譲ってもらう形で学校新聞に漫画を載せ、その圧倒的画力で藤野に衝撃を与えた。「藤野先生は漫画の天才です!」と断言する藤野の大ファンであり彼女の漫画を見て絵を描き始めた。藤野が小学校の卒業証書を渡すために家を訪れた日が彼女の運命を変えることになる。
抗議を受けての内容の修正
公開してすぐに絶賛され話題になったこの漫画ですが、広く拡散されるもうひとつの原因として”読者からの抗議を受けて内容が修正された”ということが挙げられます。
『ルックバック』作品内に不適切な表現があるとの指摘を読者の方からいただきました。⁰熟慮の結果、作中の描写が偏見や差別の助長につながることは避けたいと考え、一部修正しました。
— 少年ジャンプ+ (@shonenjump_plus) August 2, 2021
少年ジャンプ+編集部https://t.co/Vag51clfJc
作中での殺人犯の言動が偏見や差別を助長する可能性がある、とのこと。
上記のツイートは作品の公開後しばらくして修正された際のものですが、この後単行本化にあたってさらに修正され合計2回修正されたことになります。
そもそも修正する必要があったのか?などはデリケートな問題なので言及はしませんが気になる方はググってみるといろんな方が意見を書いてたりするのでそちらを読んでみるといいと思います。
個人的に1度目の修正では意味合いがかなり変わってしまっていたので微妙だなーと思っていたのですが、単行本での修正でもとのニュアンスに近いものになっていたのでまあよかったんじゃないかなと思ってます。
この漫画の魅力は?
この漫画の特徴として挙げられる点の一つが”同業の漫画家の人たちから絶賛され拡散された”ということがあるのですが、彼らクリエイターをはじめ多くの人に刺さったこの作品の魅力は以下のような点じゃないかなと個人的には思います。
- 藤野と京本、2人のキャラクターの魅力
自信家の藤野と引きこもりの京本、正反対の性質を持つ2人はおそらく藤本タツキ先生の内面を切り取ったキャラクターだと思うのですが、この2人が非常に魅力あるキャラになっています。
自信家だけど京本の画力に嫉妬して一度は漫画をやめてしまうものの、その京本に自分の漫画を褒められて思わず踊りだしてしまう藤野や、人が怖くて引きこもりになってしまったけれど藤野に憧れて外の世界へ踏み出し頑張っていく京本には多くの人が共感し惹きつけられるのではないでしょうか。
- 藤本タツキ先生の高い表現力
藤本タツキ先生の表現能力の高さには改めて驚嘆させられました。セリフの少ないページの多い漫画なのですが、表情や仕草からキャラクターの感情が伝わってきます。雨の中踊るシーンは必見の価値あり。
- 実際の事件を彷彿とさせる展開の高いメッセージ性
この作品では2019年に起きた「京アニ放火事件」をモチーフにしたような事件が作中で起きます。当時多くの人に衝撃を与えたこの事件ですが、この漫画はこの事件への藤本タツキ先生の思いが表現されている漫画と言っていいでしょう。
他にも細かい部分まで言うときりがないですがこの作品の主な魅力はこんな感じだと思います。
総じて1本の名作映画を見たような印象の漫画でした。(ぜひぜひ気合の入った映像化を期待したいところです)
最後に
この『ルックバック』という作品は2021年の漫画を語るうえで、まず間違いなく欠かすことのできないんじゃないかなと思います。
チェンソーマンやファイアパンチのころからのファンはもちろんですが、それらの作品を読んだことがないという方も是非読んでほしいと思わせ、一書店員としても自信を持ってオススメできる作品です。
残念ながら無料公開は終了してしまいましたが冒頭部分はジャンプ+で試し読みができますので、まだ読んだことがないという方はぜひぜひ読んでみてください。
↓試し読み(ジャンプ+へ)
ルックバック – 藤本タツキ | 少年ジャンプ+ (shonenjumpplus.com)
↓作者Twitter?(藤本タツキ先生の妹らしいです)
ながやま こはるさん (@nagayama_koharu) / Twitter
さて、今回の漫画紹介はこれで終わり。
このブログでは、書店員の私がお勧めしたい漫画を他にも紹介していきたいなと思っていますので、良ければ他の漫画紹介も読んでみていただけると嬉しいです。
以上、僻地のとある書店員でした。
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